2019年02月

2019年02月27日

住宅市場から見る米国経済の先行き

米国経済には2018年以降、大幅な減速の予兆と見て取れる指標が表れ始めてきています。景気に遅れて反応する雇用関係の指標は未だに好調を維持していますが、米国経済を2年程度先取りする住宅市場では、減速感が鮮明になってきています。

米国の住宅関連の指標のなかでは、住宅取引の9割を占める中古住宅販売件数はもっとも信頼性が高い指標であるのですが、2017年初め~2018年春頃に緩やかで大きな天井を形成し、それ以降は減少傾向を辿ってきているのです。

より厳密な言い方をすれば、2017年11月に581万戸で天井を打ってから現状は下げている過程にあり、2018年12月と2019年1月にはそれぞれ499万戸、494万戸と大台の500万戸を割り込み、2015年11月以来の低水準にまで落ち込んでいます。

実際に前回の景気後退に入ったのは、中古住宅販売件数のピークだった2005年9月から2年3か月後の2007年12月でした。今回のピークが2017年11月であったことを考えると、2020年2月前後の半年~1年くらいが景気後退に入る時期ではないかと意識しておく必要があります(誤差として半年~1年くらいは見ておきたいところです)。

また、前回の株価下落が始まったのはピークから2年1か月後の2007年10月だったので、今回は2020年1月の前後の半年~1年くらいが注意を要する期間となります。


  ←応援クリックお願いします!
keizaiwoyomu at 09:42|この記事のURL経済の分析・予測 

2019年02月20日

実質賃金の上昇に魔法の杖はない

実質賃金の現状については、「日本国民は実質賃金の現実をもっと知ったほうがいい」(2月5日)で申し上げましたが、これを受けて先日、ある番組のコメンテーターの方から「実質賃金を上げ続ける方法はないのか」という質問を受けました。

私の答えは「農業や観光、医療を成長産業として地道に育成し、海外からの需要を底上げするしかない」(実は、この考えはもう10年近く言い続けているのですが、農業と医療の分野では一向に成長戦略が進んでいません)というものでした。今となっては、短期的に成果が出る魔法の杖はないのです。

これは2013年以降の拙書(把握しているだけで15冊)のなかで繰り返し申し上げている内容ですが、私がアベノミクス以降に一貫して主張してきたのは、日本の経済構造の変化に合わせて、行き過ぎた円高や行き過ぎた円安の水準は変わるはずであるということです。

確かに、2000年代初めであれば、私も適正なドル円相場は120円程度であると考えていましたが、今や日本経済の構造変化に伴って、行き過ぎた円安は弱者にしわ寄せが偏る性格を持ってしまっています。

そのように考えると、国民全体にとっても、企業全体にとっても、国家財政にとっても、三方一両損ではないですが、ドル円相場は95円~105円あたりが適正ではないかと思っています。そして、そういったことを考慮に入れながら、経済政策や金融政策は決めていかなければならないと強く思っているわけです。

先のコメンテーターの方は「実質賃金を上げるためには、デービッド・アトキンソンさんが言っているように、最低賃金を10年連続で引き上げればいい」という意見をおっしゃっていましたが、それは地方の現状をあまりにわかっていないといわざるをえません。

最低賃金を10年連続で引き上げたりしたら(決して10円×10年という意味合いではないと思います)、地方の中小零細企業は経営が成り立たなくなってしまいます。たとえば、地方のコンビニエンスストアの大半は廃業に追い込まれてしまうでしょう。

農業や医療の規制を取っ払うと同時に、観光のインフラを整えることによって成長産業の育成をすることなく、最低賃金を引き上げればいいという考えは、地方の経済や雇用に壊滅的な打撃を与えてしまうことが容易に予測できるわけです。


  ←応援クリックお願いします!
keizaiwoyomu at 15:49|この記事のURL政策の提案 

2019年02月08日

講演のお知らせ

3月9日(土)に行われる 『投資戦略フェアEXPO2019』 (東京ドーム・プリズムホール) において、今年も講演をすることになりました。

2019年~2020年のスパンで見た時の、経済・株価の展望と投資戦略についてお話する予定です。数年ぶりに前向きなお話ができると思います。

今年は例年より四季報が売れていないようですが、こういう時こそ、チャンスが芽吹き始める先を見据えて、戦略を練る姿勢が重要になってきます。

お申込みをされる方はこちらからどうぞ。

(2019.2.12 追記)
先週の金曜日の時点で定員に達し、「お申し込みができません」という状態になっていましたが、運営事務局と相談をして、あと100名ほどの追加募集ができるようにいたしました。
(2019.2.13 追記)
600名以上の方々のお申込みがあり、募集は締切りとさせていただきました。ご了承ください。


  ←応援クリックお願いします!
keizaiwoyomu at 08:19|この記事のURLその他 

2019年02月05日

日本国民は実質賃金の現実をもっと知ったほうがいい

厚労省の一連の不正統計において、とりわけ野党が問題視しているのは、2018年1月から「毎月勤労統計」の数値補正を秘かに行っていたということです。

たしかに、2018年からの補正によって賃金上昇率がプラスにかさ上げされていたのは紛れもない事実であり、厚労省が集計しなおした2018年の実質賃金はマイナス圏に沈む結果となったので、・・・・・

この続きは、2月5日更新の『経済ニュースの正しい読み方』でどうぞ。

※連載記事のタイトルや小見出しは編集者の意向で行われるので、誇張気味になるケースがございます。その点はご了承ください。


  ←応援クリックお願いします!
keizaiwoyomu at 08:32|この記事のURL経済の分析・予測 

2019年02月04日

アベノミクス以降の実質賃金は、リーマン・ショック期並みに落ちていたという事実

メディアでは「2018年の実質賃金」ばかりが話題になっていますが、それは厚労省が2018年1月から賃金統計の数値補正を秘かに行い、賃金上昇率がプラスになっていたからです。実際に実質賃金を嵩上げしていた秘かな補正を取り除くと、2018年の実質賃金は厚労省が再集計した数字ではマイナス0.05%、野党側が独自で試算した数字ではマイナス0.53%という結果が出てきています。

しかし私は、野党が2018年の実質賃金だけを見て、「アベノミクス偽装だ」と言うのはピントがずれていると思います。それよりも大事なのは、アベノミクス以降の実質賃金がどのように推移してきたかということだからです。

この続きは、2月1日更新の『経済の視点から日本の将来を考える』でどうぞ。


  ←応援クリックお願いします!
keizaiwoyomu at 09:55|この記事のURL経済の分析・予測 
月別記事