2016年12月
2016年12月30日
2016年の最後に思うこと
拙書 『ビジネスで使える経済予測入門』 から言葉を借りれば、私のこれまでの経験では、経済の予測のほうが市場の予想よりもかなり精度が高いことがわかっています。経済の大きな流れを外すことはほとんどなかったと思いますし、大きく外すという要素も市場の予想に比べれば、はるかに少ないという事実があるからです。
逆の見方をすれば、市場の予想のほうが経済の予測よりはるかに難しいし、市場の予想がぴったりと当たることは稀であるといえます。そういった意味では、経済の予測をするのにあまりプレッシャーを感じたことはありませんが、為替や株価の予想をする時はいつも 「外しはしまいか」 という懸念を持ちながら述べてきました。
過去10年以上を振り返って、私は経済の見通しを大きく外したことはないと思っております。しかし、市場の予想では今のところ、4年~5年に一回のペースで大きく見誤ってしまっています。まさに今回のトランプ・ラリーはまったく予想することができなかったので、 「大きな誤り」 の事例に当てはまってしまったのです。
今回のように市場が想定外の動きをした時に、差別化された 『経済展望レポート』 では上手く対処できるように戦略 (11月18日の記事参照) を構築しているので問題はないのですが、ブログや拙書ではその後のフォローを臨機応変にできる体制をとることができていません。大きな重圧を感じる主な原因は、まさにこの点にあります。
ですから、来年以降はブログや拙書などでは、市場の予想はなるべ控えようという結論に達しました。『経済を読む』 というタイトルどおり、このブログでは経済の見通しを中心に述べていくつもりですし、市場の転換点が近づいている時のみ、見通しを述べればいいのではないかと思っております。
それが、私なりのプロとしての反省の仕方でありますし、日頃から 「結果の検証をしないプロ」 への苦言を呈している自身の処し方であると考えております。(そう思う反面、いちばんの重荷を降ろすことができるので、少しほっとしているところもあります。)
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逆の見方をすれば、市場の予想のほうが経済の予測よりはるかに難しいし、市場の予想がぴったりと当たることは稀であるといえます。そういった意味では、経済の予測をするのにあまりプレッシャーを感じたことはありませんが、為替や株価の予想をする時はいつも 「外しはしまいか」 という懸念を持ちながら述べてきました。
過去10年以上を振り返って、私は経済の見通しを大きく外したことはないと思っております。しかし、市場の予想では今のところ、4年~5年に一回のペースで大きく見誤ってしまっています。まさに今回のトランプ・ラリーはまったく予想することができなかったので、 「大きな誤り」 の事例に当てはまってしまったのです。
今回のように市場が想定外の動きをした時に、差別化された 『経済展望レポート』 では上手く対処できるように戦略 (11月18日の記事参照) を構築しているので問題はないのですが、ブログや拙書ではその後のフォローを臨機応変にできる体制をとることができていません。大きな重圧を感じる主な原因は、まさにこの点にあります。
ですから、来年以降はブログや拙書などでは、市場の予想はなるべ控えようという結論に達しました。『経済を読む』 というタイトルどおり、このブログでは経済の見通しを中心に述べていくつもりですし、市場の転換点が近づいている時のみ、見通しを述べればいいのではないかと思っております。
それが、私なりのプロとしての反省の仕方でありますし、日頃から 「結果の検証をしないプロ」 への苦言を呈している自身の処し方であると考えております。(そう思う反面、いちばんの重荷を降ろすことができるので、少しほっとしているところもあります。)
2016年12月26日
大博打に勝利したヘッジファンド
トランプ次期米国大統領が本当に「できること」と「できないこと」が明らかになってくるのは、来年の1月20日の政権発足以降の話になります。さらには、具体的なことが決まってくるのは、春先になるだろうと考えられます。
今のところ、トランプ次期政権の人事を見ていると、共和党主流派の取り込みに成功しているとはいえない状況にあります。その意味では、米国の長期金利の急騰をもたらす契機となっている「巨額のインフラ投資」と「大型減税」の実現性については、どちらも米議会で満額回答を得るのは極めて難しいだろうと見ています。(そもそも、米国では建設労働者が今でも不足していて、海外から労働者を引っ張ってこなければ、1兆ドル規模のインフラ投資は無理です)。
共和党主流派の基本的な考えを大枠でいえば、主に「親ビジネス」と「財政再建」の2つが挙げられます。トランプ氏は「親ビジネス」の面では共和党とある程度はうまくやっていくことができるかもしれませんが、1兆ドルのインフラ投資はもちろん、大型減税などは「財政再建」の面から懸念が強く、共和党とどの程度のところで妥協点を見出すかが焦点になってくるのではないでしょうか。
この続きは、12月23日更新の『中原圭介の未来予想図』でどうぞ。
※連載コラムのタイトルは編集者の意向で変わるケースがございます。ご了承ください。
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今のところ、トランプ次期政権の人事を見ていると、共和党主流派の取り込みに成功しているとはいえない状況にあります。その意味では、米国の長期金利の急騰をもたらす契機となっている「巨額のインフラ投資」と「大型減税」の実現性については、どちらも米議会で満額回答を得るのは極めて難しいだろうと見ています。(そもそも、米国では建設労働者が今でも不足していて、海外から労働者を引っ張ってこなければ、1兆ドル規模のインフラ投資は無理です)。
共和党主流派の基本的な考えを大枠でいえば、主に「親ビジネス」と「財政再建」の2つが挙げられます。トランプ氏は「親ビジネス」の面では共和党とある程度はうまくやっていくことができるかもしれませんが、1兆ドルのインフラ投資はもちろん、大型減税などは「財政再建」の面から懸念が強く、共和党とどの程度のところで妥協点を見出すかが焦点になってくるのではないでしょうか。
この続きは、12月23日更新の『中原圭介の未来予想図』でどうぞ。
※連載コラムのタイトルは編集者の意向で変わるケースがございます。ご了承ください。
2016年12月15日
想定外の相場に冷静に対処する方法
拙書やブログではこの4年あまり、大きな誤りもなく無難に経済や市場の予測を述べてきたつもりですが、米大統領選におけるトランプ氏の勝利とその後の「トランプ・ラリー」と呼ばれる相場はまったく予測するこができませんでした。
どこで間違ったのか自分なりに反省点を探してみたのですが、とりわけ「トランプ・ラリー」については反省点が1つも見つからない状況にあります。実際のところ、ヘッジファンドの面々は大統領選前に買いと売りの両建てで結果を見守っていた過程で、彼らのほぼすべてはトランプ氏が勝利したら株価は下がるだろうと予想していたのです。
おまけに、2000年以降の市場を見てきて、これほど短期間で米国の長期金利が急騰したことを見たことがありません。さらには、長期金利の急騰によって、米ドルは主要通貨(通貨バスケット単位)に対して歴史に残るほどの急激な上昇をしてきています。要するに、私の今の見識では、「トランプ・ラリー」は100%予想不可能だったということです。
そういったわけで、拙書「経済はこう動く(2017年版)」では、早い段階で市場の予想を外してしまっています。発売時期が決められた1年に1回の単行本では、今回のような事態が起きた時に、臨機応変に対応することが非常に難しいと感じている次第です。「経済展望レポート」と同じ内容をすぐにブログに書くこともできませんし、悩ましい状況が続いております。
それでも、基本的な方針は、11月18日の記事「想定外の相場にどう対処したらいいのか」で述べさせていただきました。日経平均株価がボックス圏の上限である17905円を超えるとすれば、それは想定外の領域に入るというわけですから、そういった読めない相場になった時こそ、敢えて売買をしないのが賢明であると訴えたかったのです。読めない相場に手を出すのは、上がるか下がるかの博打になってしまうからです。
捕捉を加えるとすれば、私は昨年の12月初めの段階では、「来年は上値と下値を切り下げてのボックス圏相場に入るのではないか」と申し上げましたが、現時点の局面では、「来年は上値と下値が今年よりも少し切り上がったボックス圏相場になるのではないか」というイメージを持って見ています。
今回の上昇相場に乗れていない国内の日本株運用者たちはかなり焦っているといいます。「押し目待ちに押し目なし」の状態が続き、指数の上昇に比べると運用成績の悪化が顕著になっているからです。ですから、12月に入ってからは、こういった国内の運用者たちが積極的に上値に買いを入れているということです。
そういった意味では、個人投資家にはノルマ上の制約がなく、時間軸を長めに取って市場に接することができるので、機関投資家よりも有利な状況にあるといえます。バフェットも「自分にわからないものには手を出さない」という方針を貫いていますが、その考え方を個人投資家も取り入れるべきだと思います。
ところで、東洋経済新報社の「経済はこう動く」については当初から、「私が予測を大きく外すことがあれば、その次の年からは出さない」と心に決めておりました。それが3年後になるのか、4年後になるのか、5年後になるのか、私なりに覚悟はしていたつもりですが、それが米大統領選の結果で訪れるとは思っておりませんでした。
まだ出版社には申し上げておりませんが、「経済はこう動く」の2018年版は出すつもりはありません。また、拙書やブログ、オンラインでは来年の1月以降、経済の予測だけに限定し、市場の予想については述べないようにするつもりです。それが、アナリストとしての矜持であると考えております。
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どこで間違ったのか自分なりに反省点を探してみたのですが、とりわけ「トランプ・ラリー」については反省点が1つも見つからない状況にあります。実際のところ、ヘッジファンドの面々は大統領選前に買いと売りの両建てで結果を見守っていた過程で、彼らのほぼすべてはトランプ氏が勝利したら株価は下がるだろうと予想していたのです。
おまけに、2000年以降の市場を見てきて、これほど短期間で米国の長期金利が急騰したことを見たことがありません。さらには、長期金利の急騰によって、米ドルは主要通貨(通貨バスケット単位)に対して歴史に残るほどの急激な上昇をしてきています。要するに、私の今の見識では、「トランプ・ラリー」は100%予想不可能だったということです。
そういったわけで、拙書「経済はこう動く(2017年版)」では、早い段階で市場の予想を外してしまっています。発売時期が決められた1年に1回の単行本では、今回のような事態が起きた時に、臨機応変に対応することが非常に難しいと感じている次第です。「経済展望レポート」と同じ内容をすぐにブログに書くこともできませんし、悩ましい状況が続いております。
それでも、基本的な方針は、11月18日の記事「想定外の相場にどう対処したらいいのか」で述べさせていただきました。日経平均株価がボックス圏の上限である17905円を超えるとすれば、それは想定外の領域に入るというわけですから、そういった読めない相場になった時こそ、敢えて売買をしないのが賢明であると訴えたかったのです。読めない相場に手を出すのは、上がるか下がるかの博打になってしまうからです。
捕捉を加えるとすれば、私は昨年の12月初めの段階では、「来年は上値と下値を切り下げてのボックス圏相場に入るのではないか」と申し上げましたが、現時点の局面では、「来年は上値と下値が今年よりも少し切り上がったボックス圏相場になるのではないか」というイメージを持って見ています。
今回の上昇相場に乗れていない国内の日本株運用者たちはかなり焦っているといいます。「押し目待ちに押し目なし」の状態が続き、指数の上昇に比べると運用成績の悪化が顕著になっているからです。ですから、12月に入ってからは、こういった国内の運用者たちが積極的に上値に買いを入れているということです。
そういった意味では、個人投資家にはノルマ上の制約がなく、時間軸を長めに取って市場に接することができるので、機関投資家よりも有利な状況にあるといえます。バフェットも「自分にわからないものには手を出さない」という方針を貫いていますが、その考え方を個人投資家も取り入れるべきだと思います。
ところで、東洋経済新報社の「経済はこう動く」については当初から、「私が予測を大きく外すことがあれば、その次の年からは出さない」と心に決めておりました。それが3年後になるのか、4年後になるのか、5年後になるのか、私なりに覚悟はしていたつもりですが、それが米大統領選の結果で訪れるとは思っておりませんでした。
まだ出版社には申し上げておりませんが、「経済はこう動く」の2018年版は出すつもりはありません。また、拙書やブログ、オンラインでは来年の1月以降、経済の予測だけに限定し、市場の予想については述べないようにするつもりです。それが、アナリストとしての矜持であると考えております。



