2015年03月
2015年03月25日
実質賃金を冷静に分析すると
今回は、『これから日本で起こること』(2015年1月出版)のキャンペーンにお申込みいただいた方々に3月10日にお送りした『経済展望レポート』から一部分を引用し、その上で補足を加えたいと思います。
(以下、『経済展望レポート』より一部引用)
国内の話を少しだけすると、内閣府が9日に発表した2014年10-12月期のGDP改定値は前期比で0.4%増、年率換算で1.5%増と、速報値から下方修正となりました。
菅官房長官は「景気回復の基調に変わりはない」と述べていますが、相変わらず国民生活の実態を無視した発言を続けています。GDPは2014年4-6月期の水準にも戻していないのに、実質賃金はリーマン・ショック時に迫るくらいに悪化しているのに、家計消費は東日本大震災のあった翌月の水準を下回っているのに、どうしてそのような脳天気なことが言えるのでしょうか。
2015年以降の実体経済のポイントは、GDPよりも実質賃金や家計消費などの指標がこれからどのくらい2012年の水準にまで戻していけるかということになるでしょう。私は2015年と2016年の2年間で下落幅の半分程度でも戻せれば十分であると考えておりますが、果たしてそこまで戻せるのか、今のところは自信がありません。(これについては、近いうちに述べたいと思います。)
前回のレポートでも述べましたように、2015年は原油安という追い風が吹くので、それだけで国民の実質賃金が上がるようになり、GDPも1.0%~1.5%程度の成長の底上げが期待できる状況にあります。株価が今の水準で推移することができれば、2.0%程度の成長も達成できるかもしれません。ただし、2015年の経済指標の好転で見誤ってはいけないのは、実質賃金や家計消費の弱冠の改善を見せたとしても、それは決してアベノミクスの効果ではないということです。
今年の政府とリフレ派の一致した広報戦略では、実質賃金の上昇を「対前年比」で強調しながら、アベノミクスの効果をクローズアップしてくることになるでしょう。2013年以降の実質賃金の指数自体の推移が重要であるのに、その重要性から目をそらさせる戦略を取ろうとしているのです。私たちはその点でも、冷静に数字の推移を見ていく必要があるわけです。
(引用終わり)
先週16日の参議院予算員会では案の定、首相は「4月になれば実質賃金が前年比でプラスになっていく」と強調していましたが、これだけ原油安になっているのですから、実質賃金がプラスになって当たり前なわけです(2月27日の『安倍首相は本当に運がいい人だ』を参照)。
以下のグラフは、「実質賃金と名目賃金の推移」を表したものです。黒の実線が「実質賃金」を、薄い実線が「名目賃金」を指し示しています。
(※図をクリックすると拡大できます)

このグラフをご覧いただければ、リーマン・ショックの前後の時期とアベノミクスの開始期以降を除いて、ほとんど実質賃金は下がっていなかったことが理解できると思います。
さらに重要なポイントとしては、消費増税前に実質賃金は円安によってかなり落ちていたことも確認できるでしょう。
ですから、仮に消費増税をしなくてもアベノミクスは失敗していたと、私は重ねて申し上げているわけです。
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(以下、『経済展望レポート』より一部引用)
国内の話を少しだけすると、内閣府が9日に発表した2014年10-12月期のGDP改定値は前期比で0.4%増、年率換算で1.5%増と、速報値から下方修正となりました。
菅官房長官は「景気回復の基調に変わりはない」と述べていますが、相変わらず国民生活の実態を無視した発言を続けています。GDPは2014年4-6月期の水準にも戻していないのに、実質賃金はリーマン・ショック時に迫るくらいに悪化しているのに、家計消費は東日本大震災のあった翌月の水準を下回っているのに、どうしてそのような脳天気なことが言えるのでしょうか。
2015年以降の実体経済のポイントは、GDPよりも実質賃金や家計消費などの指標がこれからどのくらい2012年の水準にまで戻していけるかということになるでしょう。私は2015年と2016年の2年間で下落幅の半分程度でも戻せれば十分であると考えておりますが、果たしてそこまで戻せるのか、今のところは自信がありません。(これについては、近いうちに述べたいと思います。)
前回のレポートでも述べましたように、2015年は原油安という追い風が吹くので、それだけで国民の実質賃金が上がるようになり、GDPも1.0%~1.5%程度の成長の底上げが期待できる状況にあります。株価が今の水準で推移することができれば、2.0%程度の成長も達成できるかもしれません。ただし、2015年の経済指標の好転で見誤ってはいけないのは、実質賃金や家計消費の弱冠の改善を見せたとしても、それは決してアベノミクスの効果ではないということです。
今年の政府とリフレ派の一致した広報戦略では、実質賃金の上昇を「対前年比」で強調しながら、アベノミクスの効果をクローズアップしてくることになるでしょう。2013年以降の実質賃金の指数自体の推移が重要であるのに、その重要性から目をそらさせる戦略を取ろうとしているのです。私たちはその点でも、冷静に数字の推移を見ていく必要があるわけです。
(引用終わり)
先週16日の参議院予算員会では案の定、首相は「4月になれば実質賃金が前年比でプラスになっていく」と強調していましたが、これだけ原油安になっているのですから、実質賃金がプラスになって当たり前なわけです(2月27日の『安倍首相は本当に運がいい人だ』を参照)。
以下のグラフは、「実質賃金と名目賃金の推移」を表したものです。黒の実線が「実質賃金」を、薄い実線が「名目賃金」を指し示しています。
(※図をクリックすると拡大できます)

このグラフをご覧いただければ、リーマン・ショックの前後の時期とアベノミクスの開始期以降を除いて、ほとんど実質賃金は下がっていなかったことが理解できると思います。
さらに重要なポイントとしては、消費増税前に実質賃金は円安によってかなり落ちていたことも確認できるでしょう。
ですから、仮に消費増税をしなくてもアベノミクスは失敗していたと、私は重ねて申し上げているわけです。
2015年03月20日
ブラジルの近未来
今週、ブラジルで大規模な反政府デモがありました。デモのきっかけは政治家の汚職疑惑にありますが、デモが広がった主な原因はブラジル経済がそれだけ疲弊しているからです。
私のブラジル経済に対する見立ては、『2015年までは通貨と株で資産を守れ!』(2012年3月刊行)、『シェール革命後の世界勢力図』(2013年6月刊行)、『新興国経済総くずれ~日米は支えきれるか?』(2013年9月刊行)、あるいはこのブログでも述べてきたように、一貫して変わっておりません。
今回は『新興国経済総くずれ~日米は支えきれるか?』の100~102ページをそのまま引用し、少し補足を加えさせていただきたいと思います。
(以下、『新興国経済総くずれ~日米は支えきれるか?』より引用)
ここまでは、資源高にずっとオンブに抱っこでやってきたから、いまのブラジルはピンチなのだと述べてきました。しかし、日本の銀行や証券会社はいまだに性懲りもなく「ブラジルレアル債」や「ブラジルファンド」などの投資信託をお勧めして販売しています。
私は数年前から、ブラジル関連の投資商品を買う個人投資家の方たちに、「借金経済で回っているブラジルは危ない。そのレベルは住宅バブルが崩壊する直前のアメリカと酷似している。こうした状態で頼みの鉄鉱石の価格が下がれば、ブラジル経済は窮地に陥るだろう」と警告していました。
なかなか理解が得られなかったようですが、ここにきてようやくその局面に突入してきたということでしょう。
その当時は中国経済の変調やアメリカのシェール革命までは想定していなかったのですが、いまや中国が経済統計を粉飾してかさ上げしているにもかかわらず、景気が悪化している状況が顕著になってきています。当然、以前のようには海外から資源を買ってはくれないでしょう。
それに重なるように、アメリカのシェール革命が資源国の経済に追い打ちをかけています。なおさら資源価格が下がってくるのは自明の理なのです。再三申し上げているとおり、これまで資源バブルにあぐらをかいていた国がそうとう厳しい状況に追いやられるのは間違いないでしょう。
トヨタ自動車がブラジル進出に本腰を入れつつあると聞いています。老婆心ながら、いまのうちはブラジル投資にはあまりのめり込まないほうが得策だと思います。
アメリカで住宅バブルが謳歌していた頃、日本企業は海外進出を含む過剰な設備投資に走り、その後大変痛い目に遭わされました。今回はその轍を踏んではなりません。アメリカへの投資は安全であると思いますが、ブラジルに対する投資は過度に行わないほうが無難でしょう。
本書の第一章のなかでも述べたように、ブラジル経済は2014年のサッカー「ワールドカップ」までは凌げるかもしれませんが、2016年の「リオ五輪」まではもたないと、私は予想しています。それは、遅くとも2016年までには鉄鉱石の価格がいまよりもさらに大幅に下がり、ブラジルの借金経済が回らなくなってしまうと読んでいるからです。
そうなると、ブラジルの国民生活に大混乱が生じ、ひょっとしたらオリンピック自体が開催できなくなるかもしれません。
(引用終わり)
経済の悪化や政治への不信を背景にして、今年1月に誕生した第2期ルセフ政権の支持率が42%から23%へと急落しています。
とくに新興国や途上国では、経済が好調な時は、政治家が悪いことをしても国民は目をつむってくれることが多いのですが、経済がひとたび悪くなると、デモが拡大し政権が吹っ飛んでしまうことすらあるのです。
ブラジル経済の問題は、「資源」と「借金」に依存した経済をこれまで放置してきたことにあります。資源価格が下落傾向を強める中で、国家も家計も借金漬けで経済が回らなくなってしまっているわけですが、この問題を解決するには相当の時間がかかりそうです。
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私のブラジル経済に対する見立ては、『2015年までは通貨と株で資産を守れ!』(2012年3月刊行)、『シェール革命後の世界勢力図』(2013年6月刊行)、『新興国経済総くずれ~日米は支えきれるか?』(2013年9月刊行)、あるいはこのブログでも述べてきたように、一貫して変わっておりません。
今回は『新興国経済総くずれ~日米は支えきれるか?』の100~102ページをそのまま引用し、少し補足を加えさせていただきたいと思います。
(以下、『新興国経済総くずれ~日米は支えきれるか?』より引用)
ここまでは、資源高にずっとオンブに抱っこでやってきたから、いまのブラジルはピンチなのだと述べてきました。しかし、日本の銀行や証券会社はいまだに性懲りもなく「ブラジルレアル債」や「ブラジルファンド」などの投資信託をお勧めして販売しています。
私は数年前から、ブラジル関連の投資商品を買う個人投資家の方たちに、「借金経済で回っているブラジルは危ない。そのレベルは住宅バブルが崩壊する直前のアメリカと酷似している。こうした状態で頼みの鉄鉱石の価格が下がれば、ブラジル経済は窮地に陥るだろう」と警告していました。
なかなか理解が得られなかったようですが、ここにきてようやくその局面に突入してきたということでしょう。
その当時は中国経済の変調やアメリカのシェール革命までは想定していなかったのですが、いまや中国が経済統計を粉飾してかさ上げしているにもかかわらず、景気が悪化している状況が顕著になってきています。当然、以前のようには海外から資源を買ってはくれないでしょう。
それに重なるように、アメリカのシェール革命が資源国の経済に追い打ちをかけています。なおさら資源価格が下がってくるのは自明の理なのです。再三申し上げているとおり、これまで資源バブルにあぐらをかいていた国がそうとう厳しい状況に追いやられるのは間違いないでしょう。
トヨタ自動車がブラジル進出に本腰を入れつつあると聞いています。老婆心ながら、いまのうちはブラジル投資にはあまりのめり込まないほうが得策だと思います。
アメリカで住宅バブルが謳歌していた頃、日本企業は海外進出を含む過剰な設備投資に走り、その後大変痛い目に遭わされました。今回はその轍を踏んではなりません。アメリカへの投資は安全であると思いますが、ブラジルに対する投資は過度に行わないほうが無難でしょう。
本書の第一章のなかでも述べたように、ブラジル経済は2014年のサッカー「ワールドカップ」までは凌げるかもしれませんが、2016年の「リオ五輪」まではもたないと、私は予想しています。それは、遅くとも2016年までには鉄鉱石の価格がいまよりもさらに大幅に下がり、ブラジルの借金経済が回らなくなってしまうと読んでいるからです。
そうなると、ブラジルの国民生活に大混乱が生じ、ひょっとしたらオリンピック自体が開催できなくなるかもしれません。
(引用終わり)
経済の悪化や政治への不信を背景にして、今年1月に誕生した第2期ルセフ政権の支持率が42%から23%へと急落しています。
とくに新興国や途上国では、経済が好調な時は、政治家が悪いことをしても国民は目をつむってくれることが多いのですが、経済がひとたび悪くなると、デモが拡大し政権が吹っ飛んでしまうことすらあるのです。
ブラジル経済の問題は、「資源」と「借金」に依存した経済をこれまで放置してきたことにあります。資源価格が下落傾向を強める中で、国家も家計も借金漬けで経済が回らなくなってしまっているわけですが、この問題を解決するには相当の時間がかかりそうです。
2015年03月18日
「投資戦略フェア EXPO2015」の講演資料(2)
前回の記事の続きとして、今回は3月14日の講演資料の後半部分の掲載をさせていただきます。
資料の見方の注意点としては、前回と同じく、青字の部分が昨年の同イベントの講演資料をそのまま転載したもの、黒字の部分が今年の同イベントで新たに追加したもにになります。2年連続での講演であるだけでなく、リピーターの方も多いと聞いていたので、実際の講演では昨年と今年の資料を並べて、時間的な流れで説明できるようにいたしました。
なお、講演では図表もたくさん使ったのですが、このブログへすべて挿入するのは難しいので、割愛させていただいております。ご了承ください。
(以下、講演資料の後半部分を転載)
日本の趨勢
①円安でも輸出・設備投資は伸びない
②円安による家計の負担増
③消費税引き上げによる景気失速
④国家のバランスシートが脆弱
⇒ 経済にリスク
↓ 今後は?
①伸びても少ない → 2017年の増税を意識
②実質賃金の低下 → 2012年の水準回復は困難
③原油安と米国の好景気 → 1%台の成長は可能
④増税する前に歳出削減を → 政治の機能不全
↓
2015年前半はでプラス成長だが、
後半は内外両方の要因で弱含む可能性
↓
米国の利上げと原油価格の反発がさらなる実質賃金の低下要因に
↓
2015年はプラス成長でも2016年は厳しい状況に
なぜ米国の経済政策を真似てはいけないのか
インフレ政策の結果、
何が起こったのか検証する
↓
2000年以降、平均で2%超の
インフレと経済成長が進んだ
↓
その一方で、実質賃金の著しい低下が起こった
↓
日本では、米国の経済成長ばかりに焦点を当て、
庶民生活について触れない傾向がある
↓
右図のような状況が自分の身に起こったとして、
どうなるのかを考えてみよう
↓
答えは決まっている
なぜ米国で格差が拡大したのか
①インフレ目標政策
→ 実質賃金の低下傾向
②株主資本主義
→ 失業者、賃下げの横行
→ 名目賃金の低下
↓
豊かな中間層の没落
中間層が没落した国は衰退していく
歴史を遡れば、ローマ帝国やギリシャも
中間層の没落から衰退していった
↓
格差拡大が国としての連帯感を失わせ、
軍事力も経済力も疲弊させた
↓
アメリカも国としての一体感を失いつつある
為替相場の見通し
①FRBの出口戦略という視点から
②米国の経済構造の変化という視点から
⇒ 中期的にも長期的にもドル高に傾きやすい
↓ 2015年の動向は?
①米国の利上げはあるのか、ないのか?
②日銀の追加緩和があるのか、ないのか?
↓
とくに日銀の動向は、
ドル円相場を大きく動かす可能性あり
(転載終わり)
前回の記事では、『この講演の前半部分の重要なポイントは、「アメリカの利上げがいつになるのか」ということでしょう』を述べましたが、後半の重要なポイントはその前半のポイントに加えて、「日銀の追加緩和はあるのかどうか」ということになります。
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資料の見方の注意点としては、前回と同じく、青字の部分が昨年の同イベントの講演資料をそのまま転載したもの、黒字の部分が今年の同イベントで新たに追加したもにになります。2年連続での講演であるだけでなく、リピーターの方も多いと聞いていたので、実際の講演では昨年と今年の資料を並べて、時間的な流れで説明できるようにいたしました。
なお、講演では図表もたくさん使ったのですが、このブログへすべて挿入するのは難しいので、割愛させていただいております。ご了承ください。
(以下、講演資料の後半部分を転載)
日本の趨勢
①円安でも輸出・設備投資は伸びない
②円安による家計の負担増
③消費税引き上げによる景気失速
④国家のバランスシートが脆弱
⇒ 経済にリスク
↓ 今後は?
①伸びても少ない → 2017年の増税を意識
②実質賃金の低下 → 2012年の水準回復は困難
③原油安と米国の好景気 → 1%台の成長は可能
④増税する前に歳出削減を → 政治の機能不全
↓
2015年前半はでプラス成長だが、
後半は内外両方の要因で弱含む可能性
↓
米国の利上げと原油価格の反発がさらなる実質賃金の低下要因に
↓
2015年はプラス成長でも2016年は厳しい状況に
なぜ米国の経済政策を真似てはいけないのか
インフレ政策の結果、
何が起こったのか検証する
↓
2000年以降、平均で2%超の
インフレと経済成長が進んだ
↓
その一方で、実質賃金の著しい低下が起こった
↓
日本では、米国の経済成長ばかりに焦点を当て、
庶民生活について触れない傾向がある
↓
右図のような状況が自分の身に起こったとして、
どうなるのかを考えてみよう
↓
答えは決まっている
なぜ米国で格差が拡大したのか
①インフレ目標政策
→ 実質賃金の低下傾向
②株主資本主義
→ 失業者、賃下げの横行
→ 名目賃金の低下
↓
豊かな中間層の没落
中間層が没落した国は衰退していく
歴史を遡れば、ローマ帝国やギリシャも
中間層の没落から衰退していった
↓
格差拡大が国としての連帯感を失わせ、
軍事力も経済力も疲弊させた
↓
アメリカも国としての一体感を失いつつある
為替相場の見通し
①FRBの出口戦略という視点から
②米国の経済構造の変化という視点から
⇒ 中期的にも長期的にもドル高に傾きやすい
↓ 2015年の動向は?
①米国の利上げはあるのか、ないのか?
②日銀の追加緩和があるのか、ないのか?
↓
とくに日銀の動向は、
ドル円相場を大きく動かす可能性あり
(転載終わり)
前回の記事では、『この講演の前半部分の重要なポイントは、「アメリカの利上げがいつになるのか」ということでしょう』を述べましたが、後半の重要なポイントはその前半のポイントに加えて、「日銀の追加緩和はあるのかどうか」ということになります。
2015年03月16日
「投資戦略フェア EXPO2015」の講演資料(1)
3月14日に行われた「投資戦略フェア EXPO2015」において、今後の世界経済や日本経済について、2年連続でお話をさせていただきました。主催会社からは「数日でお申込みを締め切った」と聞いており、たいへんありがたいことであると思っております。
主催会社には締め切り後にも「席がなくても講演を聞きたい」というお問合わせがあったということで、今回は、ご参加いただけなかった方々に講演の資料だけでもご覧いただければと思い、このブログ上で2回にわたって掲載することといたしました。
以下において講演資料の前半部分をそのまま転載しておりますが、見方の注意点としては、青字の部分が昨年の同イベントの講演資料をそのまま転載したもの、黒字の部分が今年の同イベントで新たに追加したもにになります。なお、たくさんの図表のブログへの挿入は難しいので、割愛させていただいております。
(以下、講演資料の前半部分を転載)
米国の趨勢
①失業率の低下
②住宅価格の上昇
③家計のバランスシートの改善
④中間選挙を経ても今以上に悪くならない
⑤エネルギー革命による好循環
⇒ 大きなリスクはない
↓ 今後は?
①低下は止まる → 質に問題
②緩やかな上昇が続く → 長期金利2%が前提
③改善が止まる → 融資基準の緩和
④ねじれの継続へ → マインドは次の大統領選へ
⑤原油価格下落 → 消費が拡大
↓
2015年前半は、庶民生活は堅調だが、
GDPや企業収益が伸び悩んでくる
↓
利上げの時期も絡んで来るが、
後半は株価の調整やGDPの減速が鮮明になる可能性も
↓
利上げが来年に先送りの可能性も
欧州の趨勢
①失業率の高止まり
②不健全なユーロ高
③家計・銀行・国家のバランスシートが脆弱
④欧州議会選挙での反EU政党躍進懸念
⇒ 経済と政治の両方にリスク
↓ 今後は?
①高止まりの継続 → 米国と同じく質も問題
②ユーロ安が恩恵に → 域内消費には波及せず
③徐々に改善傾向 → 5年~10年かかる
④引き続き懸念材料に → 今年も選挙に影響
↓
今年も来年も停滞は続く
新興国の趨勢
①借金依存の経済(中国・ブラジル)
②通貨安に伴う高インフレ(インド・ブラジル)
③経済構造の転換の遅れ(ロシア・ブラジル)
④政治的な混乱の恐れ(すべてに共通)
⇒ 経済と政治の両方にリスク
↓ 今後は?
①②状況が変わらず → 利上げ時の懸念
③状況は変わらず → 構造転換には最低5年必要
④徐々に顕在化 → 国民の不満の高まり
↓
今年も停滞は続く(インド以外は下押し圧力が強い)
(転載終わり)
2年連続での講演ということもあり、昨年と今年の資料を並べて、時間的な流れで説明できるようにいたしました。この講演の前半部分の重要なポイントは、「アメリカの利上げがいつになるのか」ということでしょう。利上げのタイミングによって、日本や新興国の経済が動揺する時期が大きく変わってくるからです。
次回は、講演資料の後半部分をご紹介する予定です。どうぞご期待ください。
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主催会社には締め切り後にも「席がなくても講演を聞きたい」というお問合わせがあったということで、今回は、ご参加いただけなかった方々に講演の資料だけでもご覧いただければと思い、このブログ上で2回にわたって掲載することといたしました。
以下において講演資料の前半部分をそのまま転載しておりますが、見方の注意点としては、青字の部分が昨年の同イベントの講演資料をそのまま転載したもの、黒字の部分が今年の同イベントで新たに追加したもにになります。なお、たくさんの図表のブログへの挿入は難しいので、割愛させていただいております。
(以下、講演資料の前半部分を転載)
米国の趨勢
①失業率の低下
②住宅価格の上昇
③家計のバランスシートの改善
④中間選挙を経ても今以上に悪くならない
⑤エネルギー革命による好循環
⇒ 大きなリスクはない
↓ 今後は?
①低下は止まる → 質に問題
②緩やかな上昇が続く → 長期金利2%が前提
③改善が止まる → 融資基準の緩和
④ねじれの継続へ → マインドは次の大統領選へ
⑤原油価格下落 → 消費が拡大
↓
2015年前半は、庶民生活は堅調だが、
GDPや企業収益が伸び悩んでくる
↓
利上げの時期も絡んで来るが、
後半は株価の調整やGDPの減速が鮮明になる可能性も
↓
利上げが来年に先送りの可能性も
欧州の趨勢
①失業率の高止まり
②不健全なユーロ高
③家計・銀行・国家のバランスシートが脆弱
④欧州議会選挙での反EU政党躍進懸念
⇒ 経済と政治の両方にリスク
↓ 今後は?
①高止まりの継続 → 米国と同じく質も問題
②ユーロ安が恩恵に → 域内消費には波及せず
③徐々に改善傾向 → 5年~10年かかる
④引き続き懸念材料に → 今年も選挙に影響
↓
今年も来年も停滞は続く
新興国の趨勢
①借金依存の経済(中国・ブラジル)
②通貨安に伴う高インフレ(インド・ブラジル)
③経済構造の転換の遅れ(ロシア・ブラジル)
④政治的な混乱の恐れ(すべてに共通)
⇒ 経済と政治の両方にリスク
↓ 今後は?
①②状況が変わらず → 利上げ時の懸念
③状況は変わらず → 構造転換には最低5年必要
④徐々に顕在化 → 国民の不満の高まり
↓
今年も停滞は続く(インド以外は下押し圧力が強い)
(転載終わり)
2年連続での講演ということもあり、昨年と今年の資料を並べて、時間的な流れで説明できるようにいたしました。この講演の前半部分の重要なポイントは、「アメリカの利上げがいつになるのか」ということでしょう。利上げのタイミングによって、日本や新興国の経済が動揺する時期が大きく変わってくるからです。
次回は、講演資料の後半部分をご紹介する予定です。どうぞご期待ください。
2015年03月09日
原油価格反転の鍵を握るのは
今回は、『本質を見極める勉強法』(昨年11月出版)のキャンペーンにお申込みいただいた方々に昨年12月16日にお送りした『経済展望レポート』から一部分を引用し、その上で補足を加えたいと思います。
(以下、『経済展望レポート』より一部引用)
確かに、今回の原油安を受けて、アメリカのシェールオイル開発に減速感が出てきているのは事実です。アメリカ全土でリグと呼ばれる石油掘削設備の稼働数が今月に入って減少幅を拡大しているからです。少なくとも原油の増産ペースが今後数カ月は鈍化するのは、避けられないことになるでしょう。
ただ見誤ってはいけないのは、「増産のペースが減少する」のと「生産量自体が減少する」のでは、明らかに意味合いが違うということです。アメリカの原油生産量はペースが鈍っても、原油価格が長い期間において50ドルを割り込まない限りは、増え続けることになるのは変わらないだろうと考えられるのです。
もちろん、シェールの井戸は1年~2年で生産量のピークを迎えるので、新規のリグ数が増えなければいずれは生産量の減少が避けられなくなります。とはいっても、技術革新が日進月歩で進んでいて、1つのリグ当たりの生産量が増加しているため、しばらくの間は生産量が減少するという事態は想定できないわけです。
(引用終わり)
直近のさまざまな経済関係の記事などを見ていても、私の当時の見解が裏付けられる結果が出て来ています。米エネルギー情報局によれば、アメリカの原油生産量は2月末時点で日量932万バレルと、前年比で15%も増えているといいます。シェールオイルの増産基調は衰えていないわけです。
原油価格が今後も現在の価格帯で推移すると仮定すれば、少なくともアメリカの2015年の原油生産量が減少するとは、とても考えることができません。すなわち、原油価格反転の鍵を握っているのは、サウジアラビアしかいないということになります。
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(以下、『経済展望レポート』より一部引用)
確かに、今回の原油安を受けて、アメリカのシェールオイル開発に減速感が出てきているのは事実です。アメリカ全土でリグと呼ばれる石油掘削設備の稼働数が今月に入って減少幅を拡大しているからです。少なくとも原油の増産ペースが今後数カ月は鈍化するのは、避けられないことになるでしょう。
ただ見誤ってはいけないのは、「増産のペースが減少する」のと「生産量自体が減少する」のでは、明らかに意味合いが違うということです。アメリカの原油生産量はペースが鈍っても、原油価格が長い期間において50ドルを割り込まない限りは、増え続けることになるのは変わらないだろうと考えられるのです。
もちろん、シェールの井戸は1年~2年で生産量のピークを迎えるので、新規のリグ数が増えなければいずれは生産量の減少が避けられなくなります。とはいっても、技術革新が日進月歩で進んでいて、1つのリグ当たりの生産量が増加しているため、しばらくの間は生産量が減少するという事態は想定できないわけです。
(引用終わり)
直近のさまざまな経済関係の記事などを見ていても、私の当時の見解が裏付けられる結果が出て来ています。米エネルギー情報局によれば、アメリカの原油生産量は2月末時点で日量932万バレルと、前年比で15%も増えているといいます。シェールオイルの増産基調は衰えていないわけです。
原油価格が今後も現在の価格帯で推移すると仮定すれば、少なくともアメリカの2015年の原油生産量が減少するとは、とても考えることができません。すなわち、原油価格反転の鍵を握っているのは、サウジアラビアしかいないということになります。



