2014年08月
2014年08月22日
「大手証券3社の日本経済の見通し」は理解できない
今週に入って、大手証券3社が今後の日本経済の見通しを公表しました。2014年度の成長率については、野村証券が1.5%から0.9%へ、大和証券が1.1%から0.7%へ、SMBC日興証券が0.9%から0.5%へと、相次いで下方修正しています。
各社は口を揃えて、4-6月期の成長率の落ち込みが予想以上に大きかったと言っていますが、このブログや拙書等で「駆込み消費の反動減は予想以上に大きいものになる」と伝えてきていますので、何を今さらという感じがいたします。
それはさておき、各社は7-9月期の実質成長率(年率換算)の見通しも公表しています。野村証券が5.9%、大和証券が4.6%、SMBC日興証券4.0%としていますが、相変わらず楽観的な見通しのように思われます。
再三にわたって繰り返しますが、2013年または2013年度のGDP増加分は、個人消費と公共投資の増加分だけで十分に説明できます。とりわけ2013年度では、2.3%の成長のうち、2.2%が個人消費(1.5%)と公共投資(0.7%)の増加によるものなのです。
2013年または2013年度の成長内容を冷静に分析すると、個人消費は株高によって高額消費だけが大きく伸び、公共投資は消費増税の環境整備のために大幅に引き上げられたという状況にあります。(2014年3月6日の記事参照)
しかしながら、2014年は株高が進まないなかで、公共投資の額も実質的に減っています。どうして7-9月期の成長がそこまで高くなるのか、私にはとても理解ができないわけです。私の考えがおかしいのでしょうか。それとも、大手3社のエコノミストの考えがおかしいのでしょうか。
私がこれまで拙書やこのブログで言い続けてきたことは、大規模な量的緩和を行っても、(1)実質賃金は下がる可能性が高い、(2)格差が拡大する可能性が高い、(3)輸出は思うようには増えない、(4)日本は経常赤字国になる可能性が高まる、の主に4点になります。
実際に、(1)について厚生労働省の毎月勤務統計では、実質賃金指数は1-3月期はマイナス1.7%、4-6月期はマイナス3.4%とマイナス幅が拡大しています。
(2)についても同統計から、大都市圏と地方の勤労者のあいだで実質賃金には大きな開きが生じています。それと重なるように、大都市圏と地方、大企業と中小企業の格差拡大が重層的に進んでいるのです。
(3)ついては、3月6日のブログで詳しい理由を述べていますが、日銀が重視する実質輸出は1-3月期、4-6月期と2期連続のマイナスとなっています。
(4)についても、財務省の国際収支速報によると、上期(1-6月)は5075億円の赤字であり、下期に所得収支で追い上げたとしても、2014年に日本は経常赤字に転落する可能性があるのです。
昨年から繰り返し申し上げてきたように、大方の流れがそのように動いてきています。
最後に、昨年9月に出版した『新興国経済総崩れ~日米は支えきれるか?』のプロローグ冒頭の文章を引用して、久しぶりの記事を終わりにしたいと思います。
(以下、『新興国経済総崩れ~日米は支えきれるか?』より引用)
2014年の日本経済はひどいことになりそうです。いったいなぜ?と思われる方も多いでしょうが、そうなる可能性がかなり高いと言わざるを得ません。
まず確実視されているのが、来年、2014年4-6月期のGDPが大幅に悪化することです。2013年のGDPは公共工事で底上げされたものであること。そして、消費税増税3%実施前の住宅の先買い需要、駆け込み需要の反動が如実に表れてくるからです。
2014年4-6月期のGDPの大幅な落ち込みは一気に景気を冷やすでしょう。アベノミクスの円安誘導により円高の恩恵を受けられなくなっても、「そのうちに景気はよくなる。われわれの給料だって上がる」とそれまで耐えていた国民は怒りを露わにするとともに、財布のヒモをぐっと引き締めるに違いありません。当然です。
(~中略~)
そして年が明けても景気後退が続くのを受けて、ついに安倍政権は2015年10月に10%に引き上げる予定だった2回目の消費税増税を断念する、というのが私の読みです。
そのとき安倍政権は国際的な信任の低下と、国民の景気悪化への不満の板挟みになるのではないでしょうか。そこで日本の政局に波乱が起こるかもしれません。
(引用終わり)
※多忙につきまして、なかなかブログが更新できずに申し訳ございません。
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各社は口を揃えて、4-6月期の成長率の落ち込みが予想以上に大きかったと言っていますが、このブログや拙書等で「駆込み消費の反動減は予想以上に大きいものになる」と伝えてきていますので、何を今さらという感じがいたします。
それはさておき、各社は7-9月期の実質成長率(年率換算)の見通しも公表しています。野村証券が5.9%、大和証券が4.6%、SMBC日興証券4.0%としていますが、相変わらず楽観的な見通しのように思われます。
再三にわたって繰り返しますが、2013年または2013年度のGDP増加分は、個人消費と公共投資の増加分だけで十分に説明できます。とりわけ2013年度では、2.3%の成長のうち、2.2%が個人消費(1.5%)と公共投資(0.7%)の増加によるものなのです。
2013年または2013年度の成長内容を冷静に分析すると、個人消費は株高によって高額消費だけが大きく伸び、公共投資は消費増税の環境整備のために大幅に引き上げられたという状況にあります。(2014年3月6日の記事参照)
しかしながら、2014年は株高が進まないなかで、公共投資の額も実質的に減っています。どうして7-9月期の成長がそこまで高くなるのか、私にはとても理解ができないわけです。私の考えがおかしいのでしょうか。それとも、大手3社のエコノミストの考えがおかしいのでしょうか。
私がこれまで拙書やこのブログで言い続けてきたことは、大規模な量的緩和を行っても、(1)実質賃金は下がる可能性が高い、(2)格差が拡大する可能性が高い、(3)輸出は思うようには増えない、(4)日本は経常赤字国になる可能性が高まる、の主に4点になります。
実際に、(1)について厚生労働省の毎月勤務統計では、実質賃金指数は1-3月期はマイナス1.7%、4-6月期はマイナス3.4%とマイナス幅が拡大しています。
(2)についても同統計から、大都市圏と地方の勤労者のあいだで実質賃金には大きな開きが生じています。それと重なるように、大都市圏と地方、大企業と中小企業の格差拡大が重層的に進んでいるのです。
(3)ついては、3月6日のブログで詳しい理由を述べていますが、日銀が重視する実質輸出は1-3月期、4-6月期と2期連続のマイナスとなっています。
(4)についても、財務省の国際収支速報によると、上期(1-6月)は5075億円の赤字であり、下期に所得収支で追い上げたとしても、2014年に日本は経常赤字に転落する可能性があるのです。
昨年から繰り返し申し上げてきたように、大方の流れがそのように動いてきています。
最後に、昨年9月に出版した『新興国経済総崩れ~日米は支えきれるか?』のプロローグ冒頭の文章を引用して、久しぶりの記事を終わりにしたいと思います。
(以下、『新興国経済総崩れ~日米は支えきれるか?』より引用)
2014年の日本経済はひどいことになりそうです。いったいなぜ?と思われる方も多いでしょうが、そうなる可能性がかなり高いと言わざるを得ません。
まず確実視されているのが、来年、2014年4-6月期のGDPが大幅に悪化することです。2013年のGDPは公共工事で底上げされたものであること。そして、消費税増税3%実施前の住宅の先買い需要、駆け込み需要の反動が如実に表れてくるからです。
2014年4-6月期のGDPの大幅な落ち込みは一気に景気を冷やすでしょう。アベノミクスの円安誘導により円高の恩恵を受けられなくなっても、「そのうちに景気はよくなる。われわれの給料だって上がる」とそれまで耐えていた国民は怒りを露わにするとともに、財布のヒモをぐっと引き締めるに違いありません。当然です。
(~中略~)
そして年が明けても景気後退が続くのを受けて、ついに安倍政権は2015年10月に10%に引き上げる予定だった2回目の消費税増税を断念する、というのが私の読みです。
そのとき安倍政権は国際的な信任の低下と、国民の景気悪化への不満の板挟みになるのではないでしょうか。そこで日本の政局に波乱が起こるかもしれません。
(引用終わり)
※多忙につきまして、なかなかブログが更新できずに申し訳ございません。



