2012年04月

2012年04月26日

不安は少し和らいだが…

欧州の政治リスクはどうしても意識しなければなりませんが、明るい兆しが見えてきていない訳ではありません。

フランス大統領選ではオランド優位サルコジ劣勢の情勢に変わりはありませんが、オランド氏は金融市場が警戒する大きな政府を志向する公約を何とか弱めたいと、ドイツや金融市場との妥協策を探っているらしいからです。財政規律強化の条約についてはドイツが求める現行案をそのまま認め、その代わりにユーロ共同債の導入をドイツに呑ませたいという思惑があるようです。

拙書の中でも主張しているように、ユーロ共同債は財政統合の前段階としてどうしても必要な対応策です。将来的に見て最善の策は、経常黒字国が経常赤字国に財政的な補填をする仕組みをつくることです。しかしながら、現時点でその仕組みづくりを実現できる可能性は、ゼロに近いと言っても過言ではありません。

だからこそ、その前段階として、財政補填の仕組みよりはずっとハードルが低いユーロ共同債の導入を、何としても実現しなければならないのです。その意味では、金融市場の予測するオランド新大統領誕生という「災い」が転じて「福」となす可能性も出てきています。

また、ギリシャの地元メディアが伝える最新の世論調査によると、連立与党が過半数を大幅に上回るという結果が出てきています。ギリシャ国民もそこまで馬鹿ではなかったということです。

5月にはドイツで来年の連邦議会選挙を占う州議会選挙、6月にはオランダで総選挙が行われる予定ですが、オランド氏が現実路線に方針を転換し、EUに緊縮財政を約束したギリシャの連立与党が勝利すれば、当面の政治リスクは回避されることになるでしょう。

ただし、それは現状の枠組みを壊さずに維持したに過ぎません。歴史的に見ても、5月~10月は用心して金融市場に臨む必要があるでしょう。

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keizaiwoyomu at 16:27|この記事のURL政治の分析・予測 

2012年04月09日

5月6日は今年最大の山場になる

1月17日の記事でも書きましたように、4月~5月にかけて実施されるフランス大統領選挙は、2012年の世界経済を占ううえで、重要な分岐点になると考えています。その結果によっては、世界経済にとって大きな波乱要因となりえるからです。

世論調査で一歩抜け出しているオランド氏の問題点は、主として年金支給年齢の引き下げや財政規律の緩和を提唱していることです。このように大きな政府を目指す方針は、財政規律の強化と公的債務の削減を目指す欧州全体の流れに逆行するものです。オランド氏が大統領になり、主義・主張を貫こうとすれば、金融市場が再び動揺することが避けられないでしょう。

さらに新たな心配点としては、サルコジ氏までもがEUへの拠出金凍結を選挙公約にしてしまうほど、票目当ての内向きな政策に傾いてしまっていることです。「サルコジ氏が敗れれば、欧州各国は債務危機解決のまとめ役を失うことになる」という私の基本的な考えは以前と変わりませんが、選挙向けに新たに打ち出した政策を見ると、これまでと同じようにリーダーシップを発揮できるのか、多少疑問が生じてしまいます。

フランス大統領選挙は4月22日に1回目の投票があり、首位候補が過半数に満たなければ上位2人が5月6日の決選投票に臨むことになっています。実は、この決選投票と同じ日には、ギリシャでも総選挙が行われる予定です。ギリシャの総選挙の結果如何によっては、これまでのギリシャ危機解決へのプロセスを無視する「ちゃぶ台返し」が起こる可能性もありえるのです。

これから約1カ月間は、否が応でも政治的リスクが高まっていきます。世界経済および金融市場にとって、特に5月6日は今年最大の山場になると言えるでしょう。もちろん、5月13日にはドイツでも2013年の連邦議会選を占う州議会選挙が行われるので、頭の片隅に入れておく必要があります。

なお、フランスだけでなく米国の大統領選挙やその後の予想についても、新刊『2015年までは通貨と株で資産を守れ!』に書いていますので、持っている方は読み返してみてください。

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keizaiwoyomu at 13:14|この記事のURL政治の分析・予測 
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